こんにちは、市根井です。寒い日が続いております。
みなさんは風邪など引かぬよう、十分に暖かくお過ごしください。
ちなみに僕が今いるところは…
群馬県庁です。
というのも最近、群馬県民を対象に県が行った意識調査のアンケートで「県外の人に群馬を自慢できる」と回答した県民が6割を超えた、というニュースを見て、「ホントか?群馬にそんな魅力あるんか?」って思ったんです。
だって魅力度ランキング41位だし。
群馬の魅力って、内外ともに全然伝わってないんじゃないの?と思うわけです。
で、それは広報が悪いんちゃうんか?他の県がドンパチやってるのに群馬県の広報は何をしとるんじゃ?とイチャモン、もとい直接インタビューをしに来たというわけです。
今回、そんな乱暴なインタビューを快く受けてくださったのが群馬県総務部広報課、ぐんまイメージアップ推進室の奈良さんです。
それでは、さっそく質問してみましょう!
ちなみに今回は、先日のぐんふぁフェスでイベントを共催したぐんふぁの七尾さんもインタビューに同行!
魅力度ランキングの順位上昇は目指していない
「こんにちは、ライターの市根井です。今日はよろしくお願いします。
いきなりですが『県政県民意識調査アンケート』、ありますよね。僕、あれの結果にびっくりしたんです。『県外の人に群馬を自慢できる』の割合が6割超え。ホントかよ!って。」
「よろしくお願いします。そのような結果だったようですね。」
「いまこういうWEBメディアを勝手にやっているんですが、群馬って面白い場所がないことはないんですが、なかなかパンチのあるスポットが見つからないんですよ。これとかこれみたいにB級スポット的な場所はたくさんあるんですけど。」

間違いなくB級スポットである「命と性ミュージアム」の壁
「特にグルメの枠がヤバいんじゃないかと思っていて、群馬県がご当地グルメとして推してるもの…たとえば”焼きまんじゅう”とか”おっきりこみ”とかって、感動するほどの美味しさがないと思うんですよね。欲を言えば仙台の牛タンみたいなやつが欲しいんですよ。
魅力度ランキングも最新では41位ということで、前回(45位)と比べて少し上がったにせよ、決して高い数字ではないですよね。
その辺り、県の広報としてはご自覚されてるのでしょうか?」
「(この人めっちゃ喋るな…)はい、『魅力度ランキング』で下位争いをしているというのはもちろん県としても把握しています。」
「グルメで言うと、私がイベントのために取ったアンケートでは『食べ物が茶色ばっかり』とか書かれていました。県としてはこういう状況も含めて、やっぱり上を目指しているのでしょうか?それとも現状維持みたいなスタンスなんでしょうか?」
「それ、僕も気になります。県として『魅力度ランキング1位になるぜ!』みたいな最終目標はあるんでしょうか?」
「県としては、『魅力度ランキング』の順位上昇を目標に掲げて何かをやる、ということはないですね。」
「ないんだ!意外です。どうしてですか?」
「『魅力度ランキング』というのはそもそも民間のランキングですし、どういう基準で選ばれているかというと…やはり『憧れ』的な要素が大きいのではないかと思います。『行った結果、魅力があった県』ではなくて、『楽しそうな県』みたいな。」
「言われてみれば、魅力度ランキングは上位から北海道、京都、東京、沖縄って…都会と派手な観光地って感じですね。確かに憧れランキングだ。」
「人口的に首都圏にお住まいの方が多く回答しているわけですが、群馬は東京から距離も近いので『憧れ』の対象にはなりにくいですよね。」
「そりゃ魅力度ランキング下位になるわけだ…。
一応、『群馬県が魅力度ランキング1位になるための案』をいくつか持ってきたのですが、これは必要ないですね。」
「お!ありがたいですね。一応発表してくださいますか?」
「えっと…まず『いらない市をつぶして海にする』です。●●市とか多分いらないんで、人工的に水を張って湖を作ります。そしたら擬似的な海になって、琵琶湖みたいに観光客が来るかな〜とか…」
「ははは。なるほど。間違いなく揉めますね。」
「(やべっ怒られる)ええっと次の案は、『東京に頭を下げて飛び地にしてもらう』です。今回の魅力度ランキングでは栃木と埼玉に勝ったので、もうあいつらと張り合う必要はありません。味方にするべきは東京。ということで、東京の植民地になるみたいなイメージですね」
「面白いですね。でも、それだと『群馬の魅力度ランキングアップ』にならないですね。」
「本当ですね。忘れてください…。
ちなみに、奈良さんがもし『群馬が魅力度ランキング1位になるには?』という質問をされたらどう回答しますか?」
「急に金(きん)が採れ始める…とかですかね」
「それはめちゃくちゃ面白いです」
不自然なPRはすぐに忘れられてしまう
「過去、別府の『湯〜園地』や宮城県のPR動画が大きな話題を呼びましたが、群馬県広報の戦略としてこういうのは考えていないんでしょうか?」
「群馬県はじんわりとした魅力を持つ県なので、大きな花火のようなPRは不自然になってしまいます。不自然なPRをして、たとえ一度『魅力度ランキング』等の順位が上がったとしても、すぐに忘れられて落ちてしまいます。ですから、『地道に群馬県の良さをPRしていく』というのが群馬県にとって最適なのではないかと思っているんです。
グルメに関しても、野菜や肉などの日常で食べるものは美味しくて、県外の方からもそのような評価をいただいています。」

群馬県庁32階展望ホール
「ですから、今のクオリティを保ったまま、それが群馬県のものであるということを示すのが大事だと思っています。具体的な活動として、食材出荷の際に統一したロゴマークをつけるなどの取り組みを行っているところです。」
「『無理に変えていく』というよりも、『このままの状態で売り出していこう』というスタンスなんですね。」
「そういうことになりますね。」
「待ってください!そうなるとですよ、例のマンガ作品についてはどうお考えですか?あれはどデカい打ち上げ花火でしょ!」
「『お前はまだグンマを知らない』ですよね。あれはですね…漫画家さんが群馬県をPRしてくれているという状況なので、県としては見守るくらいの考えです。
しかし、作者の井田ヒロトさんご自身としては上毛新聞や前橋市のイベントなどにイラストを提供してくださっていて、県内の自治体に関してかなりご協力いただいています。ある程度、必要な連携はさせていただいているということになりますね。」
群馬県民がディスられても怒らないのは○○だから
「それにしても、群馬県って寛大ですよね。『おまグン』にしてもインターネットにしても、ディスられることがあると思うのですが、それに対して怒ってるところを見たことがないです。」
「『おまグン』については、映像化の際に『県のデッドライン』のようなものを伝えて、あとはお任せということにいたしました。
まあ基本的に、『愛を持って書いていただけてるな』と思ったらOKですね。先方さんの創作の自由度にも関わってきますので、あまりうるさくは口出ししていませんね。」
「やっぱりそういう感じで、寛大な考えなんですね。どうしてイジられても怒らないんですか?テレビ番組でもけっこうな強度でイジられてますよ?」
「もともと県自体が豊かなほうので、余裕があるんじゃないでしょうか。
群馬県は東京に近いこともあり、流通の面や消費地の確保という点で有利です。また、自然が豊かで子育て環境も良く、『生活していく』という点においては恵まれているので、『まあそれくらいは言われちゃうか〜(笑)』くらいに受け流せる自信が根底にあるんだと思います。」
「行ってよかったよね、群馬県」にしていきたい

ぐんふぁのマスコット「ぐんふぁ」ちゃん
「東京の知り合いに群馬を案内したんですけども、『もっと寂れていると思ったら、花壇とかがすごく整備されてて驚いた。群馬ってお金あるんだね』と感動してました。『行ってみないとわからない』ってこういうことか…と。」
「そのような感想を持っていただけると嬉しいですね。我々としても、『行ってよかったよね、群馬県』にしていきたいんです。
今年、首都圏の女性を対象にした東京発着のモニターツアーを開催し、その中でインスタグラムのフォトコンテストなども行いました。」

群馬におけるフォトジェニックの最高峰「吾妻渓谷」
「とにかく足を運んでもらって、現地の美味しいものを食べてもらって、写真も撮ってもらって。実際このツアーの反応は良かったので、そこまでして初めて「群馬の魅力」が伝わるのかなと思います。」
「すぐに伝わるような魅力って、薄いしすぐに忘れられてしまいますからね。」
「大きな花火をドン!と上げても、『一回見たからいいや』となりがちです。我々としては継続性を持たせたいので、派手なコンテンツに関しては慎重に考えているんです。」
「めちゃめちゃ真面目に考えてますね。今まで『群馬って広報ヘタだな〜もっと動画とか出せばいいのに』って思ってたんですけど、理由があったんですね…。反省。」

群馬県庁32階からの眺め
「そういえば、県内向けの広報はあまり力を入れていないんですか?こういうツアーがあることも、県内の人は知らないと思うんです。知ってたら行きたかった!って人もいそうだし。」
「県外からの評価が高まれば群馬県民の自信にもつながるので、最終的に県内広報にもなっているかなと思います。」
「確かに、東京の人が褒めてくれたら『群馬で暮らすのって、思ってたよりイイのかも』ってなりますね。県広報って奥が深いな…。」
群馬県の広報、むしろめっちゃ上手かった
あの県のPR動画が炎上だの、あの県がとんでもないイベントをやるだのと、各都道府県が競い合っているようにも感じる昨今ですが、群馬県に関しては非常にのんびりしています。そしてその理由は「豊かで余裕があるから」。
これまで群馬県の広報に対して「なんか他の県と比べて地味だなぁ」と思うことが何度もあったのですが、それは県として考え抜いた結果、「時間と手間をかけてPRする」というのが最適だという結論に達したからだったんですね。
確かに、群馬県には派手なもの自体がありません。テーマパークどんどん潰れてくし。ああ愛しの赤城クローネンベルクよ…。カッパピアよ…。

県庁北側、前橋市の街並み
でも、食べ物は美味しいし、暮らしやすいし、生活する上でそこまで不満はない。
そんな群馬県をPRするために、県が地道な活動を続けていくことに重点を置いている理由もわかります。
そして、横で大きな花火が上がったら見守って、ちゃっかり乗っかってみる。
群馬県民の県民性ともいえる「がっつかない態度」で県をPRするのが一番良い方法、というのは、魅力度ランキングにとらわれていた僕にとっては新発見でした。

ぐんふぁちゃんを嬉しそうに撮る奈良さん
というわけで群馬県民諸君、群馬の広報はヘタじゃなかったぞ!
ちゃんと結果も出てきているので、むしろ上手いと言えるほどだぞ!

ジオラマと比べるとゴジラ。
僕も反省しました。ほんとだよ。
これからもっと群馬を知って、県外の人に伝えるにはどうしたらいいか考えていこうと思います。
それでは!
取材協力:群馬県総務部広報課 ぐんまイメージアップ推進室