先日、こちらの記事の取材で「純米酒ってなに?甘口と辛口って?」という超基礎的なことを教わった僕ですが、あれからというもの見事に純米酒にハマってしまいました。
そんな中、渋川市の地酒屋ぽんさん主催で「お酒の教室」が開催されると聞き、「これは行かなければ…!」と思い参加してまいりました。
教えてくれるのは「土田酒造」の社長!
講師は群馬県・川場村の蔵元「土田酒造」の6代目、土田酒造株式会社の代表である土田祐士さんです。
土田酒造といえば、群馬の日本酒好きには有名な譽國光(ホマレコッコウ)。
前回の取材で飲ませていただいて、僕もファンになったお酒です。
土田酒造は本年度の新酒鑑評会において純米酒で金賞、さらに山廃「土田」というお酒がフランス開催の日本酒品評会の純米酒部門で金賞を受賞するなど、たくさんの賞を取っている蔵元です。
プログラム
18:00 ごあいさつと趣旨説明
18:05 お酒の説明と飲み比べ
18:45 お酒とおつまみのマッチング
19:10 お食事時間
20:00 中締め
甘口・辛口の決め手は「日本酒度×酸味」
まず、私たちの前に配られていたこちらのA4ペーパー。
土田さんの説明を聞きながら、こちらに日本酒が置かれていき、飲み比べができるという仕様になっています。
なんて素晴らしいシステムなんだ!
まずは「甘口」と「辛口」の違いを体感。
甘口として用意されたのは、山廃大吟醸。こちらは日本酒度が低く、甘い口あたり。
対する辛口は「譽國光特別純米」、こちらは日本酒度がプラス。スッキリした後味で、前者と比べると辛く感じます。
日本酒度は、糖分の残り具合を示す数値です。
プラスになれば糖分がアルコールになっているということで辛く、マイナスになれば糖分が残っているので甘くなる。
と、ぼくは思っていました。
しかし、ここで土田さんから「甘口・辛口を決めるのは日本酒度だけじゃない!」というお話が。
そして私たちの前に置かれたのは、「山廃土田」と「譽國光特別純米」。
「山廃土田」は、日本酒度がマイナスのお酒。
譽國光特別純米は、さきほど「辛口」として飲んだものと一緒。日本酒度はプラスです。
しかし、飲んでみるとビックリ!味わいは異なるものの、「山廃土田」のほうが辛く感じました。
これは日本酒に含まれる「酸」が影響しているとのことで、山廃土田は酸が強め。対して譽國光特別純米は酸が弱いのです。
配布された資料をみると、このような表があります。
日本酒を辛口、甘口と感じる基準は、日本酒度だけではなく酸の強さが重要なポイントで、酸度が高いほど辛く感じることが多いそうです。
というわけで一般的には、日本酒度が高く・酸度が高いものが「辛口」、日本酒度が低く・酸度が低いものが「甘口」と呼ばれるのだそうです。
麹菌・酵母の働きと「火入れ」
ところで、日本酒を作る上でよく聞く麹菌、そして酵母はどのような働きをしているのでしょうか?
実は麹菌は、日本酒を作る時に入った米(デンプン)を分解し、糖分に変えるはたらきがあるのだそうです。
つまり、麹菌が多いほど甘くなるということ。
そして酵母のほうは、麹菌がつくった糖分を発酵させ、アルコールに変えるはたらきがあるのだそうです。
そんな説明を聞きながら、僕たちの前にまた2種類のお酒が置かれました。
ひとつは、本生原酒「零」、貯蔵から瓶詰めまで全く火を入れない生酒です。
もうひとつは、これまでにも登場した譽國光特別純米。こちらは、貯蔵・瓶詰めの段階で火入れがされたお酒です。
飲み比べてみると、生酒のほうはフレッシュ、対して火入れは落ち着いた味わい。
生酒は麹の酵素や酵母が生きているため、濃い味に仕上がるのだとか。ただし、菌が生きているということは味・品質が変わりやすいという弱点が。早めに飲まないと全く違った味になってしまうそうです。
日本酒に火入れをする理由は、品質を安定させるためだったということですね。
ちなみに火入れの一般的な温度は、65℃。
一瞬でもこの温度になれば、酵母の動きが止まるのだそうです。
また、生酒の特徴として、アルコール度数が高いということもおっしゃっていました。
これは、日本酒をつくる時に他の菌の影響を受けづらくするためなんだそうです。勉強になるなー!
原点回帰の酒造り、「山廃」とは?
麹・酵母のはたらきや火入れについての解説を受け、「なるほど〜〜〜」となっている会場。
続いては、これまで何度も登場したワード「山廃(やまはい)」の解説に移ります。
7番と8番、「山廃土田」と「譽國光純米吟醸」は、成分はほとんど同じお酒。
ただし、この2つは製造過程が異なります。
日本酒は製造過程で、余計な菌を殺すために酸を加える必要があるのですが、8番は「速醸酛(そくじょうもと)」と呼ばれる製法(画像下)で、乳酸を直接入れて作ります。
それに対して7番は「山廃(やまはい)」と呼ばれ(画像上)、乳酸菌が増えるのを待つという作り方です。
画像が小さくて申し訳ないのですが、山廃のほうはなんだか多くて大変そうなイメージが伝わるかと思います。
それはその通りで、山廃は時間・手間がかかるうえに、失敗することもある。ということで、現在は速醸酛が一般的な製造方法となっているようです。画像でも「ふつうの作り方」って書いてありますしね。
しかし、土田酒造では「山廃こそが美味しいお酒を作る秘訣なのでは」と目をつけ、これからのお酒造りを全面的に山廃にシフトするのだそうです。
これ、本当にチャレンジなことですよね。
だって、速醸酛が一般的になっている現代で、わざわざコストがかかりリスクのある昔の製法をするということですから。
しかし、土田山廃と譽國光純米吟醸は、たしかに味わいが違う。僕は山廃のほうが少し旨味が強いかな?と思いました。
山廃はよく「クセがある」というイメージを持たれがちらしいのですが、本当に昔の製法に従うと「キレイな山廃」、クセのない味に仕上がるのだそうです。
だからこそ、土田酒造は山廃という造りかたを信じ、力を入れていきたいのだとか。
熱い経営者魂を感じます…!
お酒とおつまみのマッチングを楽しもう
さて、続いてはお酒とお料理とのマッチング。
私たちのもとに届いたのは、「タンドリー鯖」「お刺身」「パリパリチキン」の3つです。タンドリー鯖ってなんだろう!
料理との組み合わせを確かめるのは、山廃大吟醸(甘口)、特別純米(辛口)、そして山廃土田(酸味強め)。
主催の本山さんは、「足りないお酒ありませんかー!」と聞いて、お酒を注いで回ってくださいます。
僕は甘口が好きなので山廃大吟醸を結構飲んでしまっていたので、「すいません1番のやつください!」と言って追加してもらいました。あくまで料理とのマッチングを確かめるためですからね!
さて、僕の結果はこんな感じになりました。もちろん個人差はあったようで、周りの方はそれぞれ異なる評価をしていらっしゃいました。
甘口の山廃大吟醸はチーズ・刺身と飲むと美味しくて、辛口の特別純米はタンドリー鯖に合う!っていうかタンドリー鯖がうますぎる。
そして酸味が強い山廃土田は、飲みやすいうえに旨味も感じて、全ての料理との組み合わせで美味しく感じました。魔法のお酒だーこれはー!
「本当に人それぞれなので、お好きに評価してみてください」と本山さん。
人によって感じ方が異なるっていうのも、お酒の醍醐味ですよね。
「地酒屋ぽん」のおいしい料理!
料理とのマッチングを確かめたあとは、本格的なお食事タイム。
さきほどいただいたパリパリチーズ、タンドリー鯖もあります。お刺身も!すごい!豪華すぎる!
お料理の配膳が済んだら、ひとまず…
乾杯!!!!
ここからはもう単純な飲み会です。楽しみます。
土田さんが持ってきてくださったお酒はなんと自由に飲んでよいとのことで、大盛り上がり。熱燗の設備もあるので、色々なお酒で色々な飲み方ができる最高の飲み会です。
赤いラベルの麹九割九分の譽國光は、なんと通常20〜30%程度の麹の割合を99%まで引き上げた限定醸造品。
飲んでみると、ぶわっと広がる甘い香りに濃厚な旨み!!
説明があったように、麹のはたらきは米のデンプンを分解し、糖分に変えること。納得の味わいです。
ここからは、土田さんも飲み会に参加。
参加者の中には「全国きき酒選手権」の群馬大会で優勝された方もいらっしゃり、大いに盛り上がりました。
ちなみに土田さんはお酒に弱いらしいです。ギャップ!
昔の造り方にならう、原点回帰の酒造り。
というわけで、中締めの時間がやってまいりました。
僕は手締めと同時にお暇したのですが、残りたい方は残ってOK!ということで、参加者のみなさんは僕が帰った後もお酒を楽しんでいました。
現代の主流である速醸酛ではなく、あえて昔の山廃という造り方に目をつけた土田酒造。
「山廃は失敗も偶然もある。造っていて本当に面白い」と語る土田さんは、譽國光の名前を背負う土田酒造株式会社の経営者であると同時に、酒造りを愛する職人でした。いやーほんとに群馬の誇りです!
そんな土田さんの造るお酒は、ここ地酒屋ぽんで飲むことができます。ぜひ、みなさんも飲みに来てみてください。
お店の情報
地酒屋ぽん
住所:群馬県渋川市渋川1826-27 ルブランビル2階(渋川駅から徒歩5分)
定休日:火曜日
土田酒造
住所:群馬県利根郡川場村川場湯原2691(沼田ICから川場方面へ約6km)
定休日:なし
売店・お食事処もあります。