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「面白がる視点」と「何もないの呪い」。これからのローカルに必要なものとは? 【2/15 徳谷柿次郎トークイベント in Comm】

2019年2月15日、「岡 正己市政報告会&徳谷柿次郎トークイベント」が開催されました。

前橋市議会議員の岡正己さんによる市政報告会に続いて、WEBメディア「ジモコロ」の編集長である徳谷柿次郎さんのトークセッションが行なわれ、ローカルの現場でバチバチに動いている方々の貴重なお話を伺うことができました。

今回はその中でも、徳谷柿次郎さんのトーク部分をレポートにしてご紹介します。

 

「ジモコロ」は、goomaを立ち上げる大きなきっかけになったメディアです。東京に行かなくても、いや、地方にいるからこそ出来ることがある…と確信を持てたのも、自分はWEBという土俵で戦おうと思えたのも、ジモコロの存在があったから。

これからの群馬を考える人、若い人へのリーチに悩んでいる企業、地元を出て東京に出ようか悩んでいる学生。これらすべての人に知らせたい言葉がたくさん飛び出るトークイベントとなりました。

以下より、柿次郎さんの言葉を引用してまとめたレポートとなります。

ローカルに必要なのは「面白がる力」

ジモコロのトップページ

これからローカルを考えていくうえで大切なのは、ローカルの良いところも悪いところも面白がる力を身につけて楽しむことだと思っています。面白がるためには解像度を上げなければならないわけですが、そのためには

  1. 旅に出て人に会う、文化に触れる
  2. 旅先で面白がったことを本で深掘りする
  3. その話をアウトプットして人に伝える

これらを繰り返す必要があります。とにかく人づてに面白い人を捕まえて、自分から面白がって、言語化して伝える。これをもっと多くの人がやるといいと思っています。

「ジモコロ」は現在月間100万PV、50万UUを獲得しています。平均滞在時間35分とWEBにしてはかなり長め。さらに若年層に人気があります。また、小さな声を届けるWEBマガジン「BAMP」というメディアではジモコロよりも社会的なものを取り扱っています。そんなことをやっていたら漁業メディアGyoppyを作ることになり、TBSニュースで「Dooo! 」の司会をつとめたり、NHKに出演したり。

さらに現在は長野と東京の2拠点生活をしていて、知事のインタビューをしたり、「やってこ!シンカイ」というお店のオーナーをしたりしています。

 

そんな私ですが、もともとはかなり貧乏な生活を送っていました。大阪の、全く自然がない灰色の世界で育った私は、親父がパチンコ中毒で。闇金でトゴ(借金の利息が10日で5割)の世界に堕ちてしまいました。当時は自分の生活費を稼ぐために新聞配達の仕事をしていて、そのときに聴いた音楽などが文化の根っこになっている気がします。

そして26歳で上京し、編集プロダクションで修行することになったのですが、あるときFacebookで「薪割りをして背筋を鍛えたい」なんてことを投稿していたら実際に長野で薪割り体験ができることになって。こんな生活をしている人がいるんだなと衝撃を受けました。このエピソードはジモコロを立ち上げる大きなきっかけになりましたね。

■参考:柿次郎さんの半生について 【徳谷柿次郎さん】もともと何もない。ただ「生き残らないと」っていう危機感だけがあった。

実例、ジモコロの取材で出会った面白いおじさんたち

まずはタケノコ王。別件の取材で静岡県の道を車で走っていたら「クワガタ」「固いもも」「たけのこ」といった訳のわからない看板が目に入り、気になりすぎたので取材終了後に訪れてみました。

ジモコロの記事:【伝説】クワガタとタケノコで大稼ぎ! 謎の農家「風岡直宏」はなぜフェラーリを買えたのか?

この人はまさにタケノコを面白がって価値を作ってる人で、ジモコロの記事が出た後にテレビに出演、今や地元のヒーローになっています。

次に山形のマッドサイエンティストおじさん。この方もアポなしで取材しています。

ジモコロの記事:「金がないなら稼げ」元ヒモのマッドサイエンティスト農家が語る人類改造計画

日本の在来種の種を預かるシードバンク、ウイスキーなどよくわからないことを色々やっている人なんですが、何よりやばいのが足に2kgずつの重りを付けてること。自分の足が軽すぎるから、って言ってました。ちなみにジモコロでは追跡取材もしているんですが、2年後に会いに行ったら足の重りが3kgずつに増量してました。

群馬ですと、ホライズンラボの響くんの記事を作りました。ジモコロの記事が出てから地元新聞に取材され、金スマに出て、ニュースでも特集。書籍も2冊出されました。追跡取材をして、人の生き方に関わっていくメディアを作っています。

ジモコロの記事①:「あえて高校に行かず15歳で「コーヒーショップ」を構えた少年」
ジモコロの記事②:「インターネットの記事一つで人生が激変した「15歳のコーヒー焙煎士」の現在」

面白がる視点で、やばい人をそのまま伝える。こういう間口を作ったほうが若い人に伝わりやすいんです。そして、興味があることをずっとやりつづける、狂気の実践者が新たな価値を作っていくと思っています。

ローカルのキーワードと「何もない」の呪い

地方に出向いていると、「何もない」の呪いがあることに気づきます。ここには何もない、客が来たってしょうがない…そういう呪いをかけられて育った若者が東京に出てしまいます。これを取っ払わないことにはプレイヤーが育つわけがありません。

だから「こんなにあるよ」という姿勢で相手しつづける必要があります。そこで大切になるキーワードが、「風の人」と「土の人」。

風の人…外の視点で見る人
土の人…ずっとその土地で活動する人

この両方がないと、ローカルでの成功は成立しないと思っています。風の人が土の人を面白がり、土の人が風の人を受け入れる。

そして、関係人口から実践人口へ。とにかく、地域の中で実践する人口を増やさないといけない。これを増やすために、実践している人の姿を届けたいと思っています。

全国取材で気づいたこと

  • 即効性のある言葉や手立ては基本的にないと思ったほうが良い。土地によってやり方や資源が違う。こうすれば解決、と言い切ってる人のほうが怪しい。
  • 5,10,30年の時間軸で取り組む。地方創生で名前が上がってる地域は30年単位で取り組んでいる。その先の時間にどれだけ投資できるかが大事。
  • 街のプレイヤーと文化を可視化する。この街にはこういう人がいる、など。
  • 外の人間と共に地域資源を掛け算する。内側の人が作って、複数の価値観を掛け算して良いものを作る
  • 教育含め、若者の可能性を最大化する。上の世代は新しい価値観を否定する。これまでの価値観と新しい価値観は噛み合わないので、ハブの人が必要になる。

「取材してもらう」ために必要なもの

  • 観光資源以外の面白さを言語化する。誰もが想像する分かりやすいものではなく、その土地に住む人しか見つけられないものを。
  • メディアや編集者の人間をアテンドする。誰も気づいてないものを取り上げたい人を取り込む
  • 点ではなく線で関係性を持続させる。
  • 動き続けている姿勢を下手でも発信し続ける。アーカイブしていけば誰かが見つけるかもしれない
  • 外ではなく内のプレイヤーを育てる

 

感想

ローカルに特効薬はなく、長期的な目線で投資できるかどうかが鍵になる。風の人が土の人を面白がるのと同時に、土の人が風の人を受け入れることが重要。そして何より、若者の可能性を最大化する必要がある……。

どれも耳が痛いワードばかりです。

長期的な目線で見ればプラスなので投資してくださいよ!と思う気持ちはあれど、それを言っている自分は「目の前の利益にならないもの」に投資できているだろうか。「まだ若い自分」に甘んじて、自分より若い人の可能性をつぶしてしまってはいないか。さまざまな自戒を得るイベントとなりました。

とはいえ自己犠牲的になりすぎると、自分に割けるリソースが枯渇し疲弊してしまう。それで「ここに居たら死んでしまう、とりあえず東京行って稼ご……」となってしまっては本末転倒です。バランス大事。

goomaという看板を掲げてコンテンツを作り、どうしたら群馬を面白くできるかを日々考えている自分ですが、現段階でそこそこ死に近い位置にいる気がしています。ローカルで踏ん張るみなさんも、どうぞ適度に自分を労りながら。