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たばこ・喫煙を、地方の理容室から考える。「個人の自由」ってどこからどこまで?

※喫煙や特定の商品を推奨するものではなく、あくまでも喫煙にまつわる社会を考えるきっかけを作ることを目的としています。

 

成人男性の喫煙率が50%を割ったのは、平成14年ごろ。それまでは(男性においてのみですが)喫煙者はマジョリティで、現在よりもさらに男性優位な時代性もあり、煙草を吸うことは「当たり前のこと」だったようです。

近年は喫煙に関する環境が急速に変化していて、税額がどんどん上がっていることに加え、街の喫煙所は減り続けていますし、飲食店においては原則禁煙に。そもそも、紙巻きたばこの販売数量は平成10年と比べて1/3程度にまで落ち込んでいます。

そして喫煙者と非喫煙者の関係にも変化があります。もはや少数派になった喫煙者に対するネガティブな発言は、SNSを通してたくさん目にするようになりました。

 

私(筆者)は、このままではよくない、と思っています。なぜなら、話し合いを省略した喧嘩が起こっているような気がするからです。

そこで今回は、煙草と文化的に近い「理容室」を経営する方へインタビューを行い、喫煙に関する事情や所感を伺うことで、異なる考え方をもった人たちがお互いに知り合う第一歩になるのではないかと思いました。

インタビューを快く承諾してくださったのは、前橋市で美容室&理容室「アダムとイブ」を経営する大原さん。大原さん自身も元・喫煙者ということで、仕事上の話から個人的な話までさまざまなことを聞かせてくださいました。

店をリニューアルしても灰皿を残した理由

─今のお仕事を始めてから、何年くらいになりますか?

高校を卒業してからなので、26年目になります。床屋を44年間続けた両親が、時代に合わせて「美容室も必要だ」と考えて始めたのが「アダムとイブ」で、つい最近リニューアルを迎えて現在の形になりました。

店舗は「理容室アダム」と「美容室イブ」に分かれていて、さまざまな層のお客さまに親しんでもらえるように作っています。ひとりあたりのスペースもかなり広めに取っているので、ソーシャルディスタンスも確保できています。

─自分も自営業ですが数年目で、同じ仕事を26年続けることに関してイメージできずにいます。

「自分のやりようで、どうにでもなる」っていうところが、自営業の強みでもあるし、弱みでもあると思うんですよね。自分がやりたいようにお店を作っていくことができる代わりに、それが絶対に受けるわけではない。いつでもリスクと向き合わなきゃいけないんです。しかも、社員や家族の生活がかかっていますから、何かが上手くいかなかったからといって「やーめた」ともできない現実がありますよね。

─お店の前には灰皿が設置されていますが、リニューアルに際して、喫煙環境のことで何か考えたことはありましたか。

JTとは床屋の組合の関係で接点があり、何度かお話をする機会がありました。自分たちとしても現状を考えると、やっぱり煙草を吸っているお客さまは多いんですよね。もともと私も喫煙者なので、吸っている方の気持ちも理解できますし。ただ現在は未成年が入れる場所での喫煙を禁止する決まりがありますから、お店の外に灰皿を設置する形にしました。

お客さまを大切にしようとすると、いろいろな配慮が必要になります。車椅子でもお店に入れるようにスロープを作りましたし、施術の椅子も移動式にして、座り直さずに車椅子のまま施術できるようにしました。メニューに関しても、髪の毛や頭皮を綺麗にするようなメニューを充実させています。灰皿を設置したのも、その気持ちの中のひとつというか。

写真:アダムとイブ提供

また、美容室や理容室はお客さまの滞在時間がとても長くて、カット+カラーだと2時間くらい、ストレートパーマだと3時間くらい同じ場所に留まっていただくことになります。そして滞在時間が長くなると、喫煙者の方は口元の寂しさを感じてきますよね。

ちなみに、リニューアル前の店舗の時代は規制が無かったので、喫煙者の方には店内で煙草を吸っていただいていました。煙草吸いますか?と聞いて、灰皿をお持ちするんです。

─そんな時代があったとは聞いたことがあります。大学の先生が授業中に喫煙したり、駅のホームでみんな喫煙したりしていたらしいですね。

ただ煙草を吸っていない方からは、「煙が気になる」「髪に臭いがつくので嫌」という意見がたくさん出ていました。昨今は喫煙に関する規制が多くなって「喫煙者の肩身が狭い」みたいな話が出ていますけど、規制が無かった頃はどこでも吸い放題だったわけですから、もともと肩身が狭かったのは吸っていない人のほうなんですよね。そう考えると、吸う人と吸わない人が同じ空間を共有しながら共存するのって、なかなか難しいんじゃないかと思うんです

─そうですね。これまで非喫煙者の方は、かなり声を上げづらかったのかなと思います。

とはいえルールを守っている喫煙者の方へも必要以上に冷たい目線で見られたりするので、そのあたりも含めてお互いに歩み寄ることができれば、自分は喫煙をしてもいいと思っています。うちの場合は外に灰皿がありますし、一席一席の空間を広く取っているので、体から出る臭いもそこまで気にならないと思うんです。どうしたらお互いにストレスを感じずに快適に過ごせるかを、お互いが考えていけたらいいですよね。

─うまく分煙ができていれば問題ない、ということですかね。

そうですね。基本的に喫煙は個人の自由だと思っています。でもそれは完全に分煙ができている場合です。うちは田舎だから外に灰皿を置いていて、公道との距離も空けることができていますけど、人が多くて敷地が狭い地域だとそれが難しいかもしれない。道ギリギリの路面店では灰皿が置けない、みたいなことがあるそうなんです。

─群馬県は特に喫煙率が高い県ですし、喫煙環境と地域性は関係がありそうですね。

あと、池袋の東口ですかね、そのへんで唯一の喫煙所に人が密集してるじゃないですか。その結果、喫煙所の外で煙草を吸う人が出てきてしまったりしていますよね。もう少し喫煙できる場所の選択肢があれば、マナーを守る人が増えて、結果的に吸う人と吸わない人がお互いに気持ちよく過ごすことに近づくと思うんですけどね。

メリットとデメリットを理解すること

─現在は喫煙されていないということですが、そもそも煙草を吸い始めたきっかけは何でしたか?

まあ、カッコよさですよね(笑)。自分が若い頃はみんな吸ってましたし、なぜかカッコいいヤツ、仕事できるヤツほど吸ってるんですよ。すごい良い音のするZippoを持ってるとか、そういったものへの憧れからですね。

─わかります。自分も、文豪的な人がゴチャゴチャの書斎で煙草を吸っている姿は正直カッコいいなと思っちゃいますね。なぜか。

やっぱり、そういうところからだと思うんですよね。純粋に煙草への興味本位で吸い始めるっていうケースは少ないんじゃないかと思います。うちは両親がずっと吸っていて、幼い頃から両親が煙草を吸っている環境にいたので、幼い頃は煙草が嫌だったんです。でもいつしか、カッコよさに負けて吸い始めてしまいました。

─関連して、喫煙のコミュニケーション上の機能について、なにか感じたことはありますか。

仕事の合間で煙草を吸いながら先輩と話すとか、先輩が吸ってるから僕も吸ってるんだ、っていうのをお客さまから聞いたことがありますね。私としても、今でも仲の良い友達は当時一緒に煙草を吸っていた人たちだったりするので、喫煙がコミュニケーションにメリットを与えることもあることは、否定できないと思います。感覚としてはお酒に近いかもしれませんね。

ですから、例えば喫煙以外でそういったコミュニケーションをとりやすい場があれば、代替されるのかなと思ったりもします。

─確かに。たとえば7人くらいのグループで会話していて、「煙草吸ってくる」って2人くらいで抜け出して喫煙所で喋ると、そこそこ良い話が出る実感がありますね。

─続いて、喫煙をやめたきっかけについて伺ってもよいですか。

煙草をやめたのは、肺気腫ができたからです。禁煙外来に通って、結構苦しい思いをしてやめました。

─差し支えなければ、禁煙外来に通っていたときのお話を聞かせていただけませんか。

治療方法にはパッチ式と錠剤式があって、私は錠剤式でした。ただ副作用があって、とにかく眠気と体のだるさが凄かったんですよね。花粉症の薬みたいな感じで。

病院で言われたのは、ニコチンと脳内物質が合体すると、快楽のホルモンに変わるということ。処方されて飲んでいた錠剤は、その成分がニコチンよりも先に脳内物質とくっついて、ニコチンが合体しなくなるようなものです。だからその錠剤を飲んでいると、だんだんと煙草が不味くなっていくんですよ。ほんとうは約3ヶ月続けるんですが、私は副作用が苦しかったので1ヶ月半で終えました。

煙草はコミュニケーションの道具になりますけど、もちろん健康的なリスクがあるので、それも理解、承知して楽しむということですよね。

─リスクを知ったうえでメリットを享受する、ということですね。外箱の文章もちゃんと読まないといけませんね…。

今はパッケージにリスク表記がありますけど、昔はなかったんです。そのものに存在するリスクについては、売る側はちゃんと明確にしなければいけないし、買う側は理解したうえで買わなければいけないと思いますね。メリットだけを伝えるのはずるいし、結果的にマーケットが長続きしない。

私は煙草をやめましたが、吸ってた頃を後悔することって、あまりないと思います。そのときの良さってあったと思うし、かっこよさだとか、優越感を感じた青春時代がありましたからね。いろいろなことを理解したうえで、自分で人生を選択していけることが大事なんだと思います。

最後に(筆者より)

喫煙者は自分自身と周囲の非喫煙者の被るリスクを理解することが必要ですが、非喫煙者も喫煙者がどんな意図で吸っているのかを知ってみるのはいかがでしょうか……という気持ちで企画した今回の記事。どちらの側からしても、「個人の自由を残すために、自分で責任を持って考え、行動していく」という点が共通しているように思います。

たとえば、いまは選択肢として加熱式たばこや電子たばこなど様々なものが開発されているので、そういったものを使ってみることで共存に近づくこともできるかもしれません。私自身も、煙やにおいの影響をなるべく小さく抑え、かつ自分のニーズを満たすために加熱式たばこに移行してみた喫煙者のひとりです。

そしてこれは喫煙に限らず、いろいろな趣味や仕事についても当てはまる、自分の人生を納得しながら生きるためのコツです。大原さんご自身も、アダムとイブの経営者として、元・煙草愛好家として、そして禁煙外来に通った患者として、複雑な基準のもと選択を行ってきたのだと思います。

今回の取材を通して、「喫煙するなら、より意識的に喫煙しよう」という気持ちになりました(たくさん吸おう、ということではなく、「なんとなくで吸わない」という意味です)。とくに喫煙は健康のリスクもあるため、なんのために吸うのか、または吸わないのかは、よく考えたうえで選んでいきたいところですね。